書評

2012年1月 6日 (金)

顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説―アマゾンを震撼させたサービスはいかに生まれたか

いただいたもの

型破りに顧客志向のカスタマーサービスを行うことで有名になったオンライン靴店ザップス社の創業者が、ザッポスの創業から成長の歴史を中心に振り返った本です。

本書の前半、

- 子供の頃、親に命じられたバイオリンの練習をどうやって(技術的に)サボったか
- オラクルに勤めながら始めた副業のウェブ制作でどうやって顧客を見つけたか
- ポーカーの勝ち方から、ビジネスの進め方を学ぶ

といった、ザッポス以前の著者のエピソードから、いつもより良い方法はないかを考え続ける人となりが伺えます。

また、社内システムを使って社員同士の認識をテストし、交流を推進するという仕組み「フェース・ゲーム」のところは面白いですね。サイボウズでも社員の自己紹介を順番に日替わりでポータルのトップに表示するなどというのをやっていますが、見せるだけじゃなくてテストにしてしまう。

全体を通して、ザッポスという会社が社員と作ってきた独特のチームには、過去に日本企業がやってきて、当時は日本企業の強さの秘密、と言われたこととの共通点が多いように感じました。社員を家族扱いし、勤務時間以外でも社員同士で遊ぶことが多いとか、自分の担当権限よりも目の前の顧客のことを考えてできることを行うとか、入社時の研修として職種に関係なくカスタマーサポートの最前線に出てサポート業務を数週間担当するとか、 アメリカの企業から見れば異質でしょうし、それがザッポス社を有名にしたのでしょうけれど、こういったことは伝統的な日本企業の観点ではそれほど奇異とは取られないでしょう。入社直後に長期顧客のそばに行くなんていうのは、松下電器とかが新卒に販売店に行かせるのと同じですよね。

そういう古い感じの体育会的なノリ、僕は個人的には好きじゃないですが、それがはまる会社・チームを作って、アメリカで顧客に「新鮮な驚き」を与えられたのが、ザッポス社成功の理由なのかもしれません。


[書評に関する注意書き]

  • 貰って書いた本についてはその旨記述します
  • このブログはサイボウズ・ラボの社員ブログなので、秋元個人に献本いただいても、何でも自由に書けるわけではありません。
  • もちろん、書評以外の他のブログエントリもそうですが、社員ブログではあってもサイボウズ・ラボ全社やサイボウズ・グループの意見を代弁してるわけではありません。
  • 献本いただいても必ず読めるわけでも、ご紹介できるわけでもありません。読書の速度は遅いので、発売前や発売直後に送っていただいても、ご紹介が半年後になるようなことも多々あります。

バイラル・ループ あっという間の急成長にはワケがある

いただいたもの

バイラル・ループは、人から人への紹介で広まっていく、ウィルスのような(=バイラル)商品やサービスの伝播について書かれた翻訳書です。ウェブの上でのクチコミは、それ以前と比べると広がる速度はとても速くなっています。友達と実際に対面することなく良いものや面白いものの紹介ができますからね。

そのような、口づての紹介の広がるさまをうまく利用して人気になったwebサービスを、いろいろな事例を挙げて紹介しているこの本は、webサービスを作ったり運営したりしている人や、物がどうやって評判になり、売れていくのかを常に悩んでいるであろうマーケッターの人にとってはとても面白い読み物だと思います。

第三章では、特定グループ向けのソーシャルネットワークを自分で作れるサービスNingも出てきます。このNing、本書の書かれた後の現在はちょっと事業縮小の方向にあるようで成功事例とは言えなくなってきたかもしれませんが、2005年の登場時には僕も面白いと思いこのブログで何度も紹介したので感慨深いです。

一人の利用者が新たに連れてくる次の利用者の数をバイラル係数とし、その係数さえ大きければサービスの人口は増大していく、という話は、良いサービスを作れば皆が使ってくれる、という理想とは少し違っています。役にたつ、や、良い、と、広まるのギャップを、それぞれの成功した起業家はどうやって縮めたのか、あるいは縮めようともせずとにかく広めることだけ優先したのか。eBayやPaypalなどの巨大企業が、どのような思考の結果どんな施策を行い、それがどう成功につながったか、知っておくことはいいことではないかと感じました。

なお、2010年に送っていただいたようなので、読んで感想を書くのに1年以上掛かってしまい、この本自体の発売時のバイラル・ループにはあまり寄与できなかったかもしれません。


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2011年11月24日 (木)

ソーシャルストリーム・ビジネス Twitter、Facebook、iPhone時代の消費者を巻き込むビジネスの新ルール

いただいたもの

リクルートのメディアテクノロジーラボは、数々のwebサービスのリリースやマッシュアップコンテストの主催者として知られていますが、その中の研究者にして実践者の人たちが実際にやってみて成功したり失敗したりしたソーシャルビジネスの内容をまとめたのがこの本です。

実際にソーシャルなサービスを作り、公開し、プロモーションを行なって、何をしたらどういう成果が出たか、あるいは出なかったか、という話を事例を基にして解説しているため、成功した企業の自慢本とは違う真実味があります。

情報として特に役に立ったのは、第四章で、webサービスの換金化の手法について4つに分類し、それぞれのモデルや課金方法、収益を高める方法などを説明しています。

ソーシャルメディア利用のガイドラインやカスタマーサポート、サーバ側のクラウドの利用など、webサービスに関わる広い範囲の話題を一冊の中で扱っており、それぞれの実務を担当する担当者だけでなく、プロジェクトの全体を見渡すべきマネージャーに対しての本だという風に感じました。


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2011年10月31日 (月)

日経Systems 2011年10月号

いただいたもの

連載の切り替え時期の号を貰えるということで応募してみました。昔固い会社のときは(今もそんなに柔らくはないですが、それでもベンチャーなので)よくこのあたりの日経の雑誌を読んでたので懐かしい感じ。

特集は「要件定義の極意」。要件定義の腕前はほんとうに大事だと思います。本当に解決すべき問題にあたらず、顧客が思い込んでいる良くない解決法を頑張って実装する、みたいな失敗例は多いですからね。このへんは時代がどうなってもソフトウェア開発の肝であり続けるのでしょうね。

たとえば、新連載「Webシステムを変えるHTML5」で、HTML5の導入で一番問題となりそうな、社内での古いInternet Explorerの普及率などの数字を出して、どのバージョンのIEでHTML5のどの機能が使えるかとか、それを使えるブラウザーの現在のシェアはどうなっているか、などをスペースを割いて説明しているのが、企業向けのシステムを作る開発者のための雑誌、という感じを強く受けます。

提案書・仕様書やそこで使う図の描き方などを解説する連載の多さも、雑誌のターゲットが出ていて面白いです。最近提案書とか書いてないなあ。


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2011年8月 9日 (火)

Android2.3 Only Hacks - Gingerbreadをさくさく使うためのサンプルとテクニック

いただいたもの

こういった新仕様を解説する書籍の意義は、英語のドキュメントしか無くてたいへんなので補助として買う、ということもあるとおもいます。しかし、実際に本書を読んでみると、英語のドキュメント「すらも」ないAPIがいくつも存在して、それを正式なドキュメント以外のメーリングリストやフォーラムでの議論から探してきて紹介しているものもあり、決して英文和訳だけの本ではないことがわかります。

個人的には、注目の非接触技術であるNFCを使うためのコードや、C/C++でコードを書けるNDK、音声認識機能のアプリからの呼び出し、などが特に楽しそうです。UIやアプリの利用感向上につながる改善へのアクセスや、音楽・電話関連の機能など、いろいろなところでAndroid OSに手が加え続けられていることがわかります。

Android2.3(Gingerbread)を搭載した最新機で動く、新しいアプリケーションの発想を得るのに役立ちそうです。バージョン2.2までの実機しか持ってないのですがまた買いたくなってきました。


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2011年7月20日 (水)

パーフェクトPHP

いただいたもの

PHPの入門本ですが、入門本でありながら本を一冊読み終えた時の到達点がかなり中級レベル以上に設定されている本です。分厚いです。

最新のPHP5.3に対応した環境構築や言語の解説から、フレームワークやオブジェクト指向、セキュリティまで幅広いトピックが解説されています。読み進めることで、シンプルなフレームワークやアプリケーションの作成までを身につけることができそうです。

歴史が長く、改良が続けられてきたPHPには、同じことをするのにも複数の異なるやり方やライブラリが提供されていることが少なくありません。ですので、あまり考えずにその場その場で検索して最初に出てきたやり方をコピーしていると、主流ではないライブラリを使っていたり、一昔前は良く使われていたけれども今使っている人はいないやり方で問題を解決していたりということに陥りがちです。入門本を書いている著者自身がそういう陥穽にはまって、古臭いやり方を勧めていることもあります。

本書は、最新案定版であるPHP5.3の情報にもキャッチアップし、最新の情報をブログや勉強会でも紹介している3人の著者が、今もっとも確かなやり方、ベスト・プラクティスを選んでPHPの使い方を教えてくれるという意味で、これからPHPを始める人にも、自分のPHPの書き方がモダンかどうか自信がないという人にも良いのではないかと思います。


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2011年6月15日 (水)

スティーブ・ジョブズ氏の伝記がアメリカでマンガに

Stevejobscomiccover

今年の8月に向けて、アップルCEOスティーブ・ジョブズ氏のコミックが製作中だということです。著者のCooke氏のコメント,

「彼を崇拝しようが憎もうが、ジョブズのビジョンとビジネス的な見識は世界を作り変えた」「過去30年の間に私たちのコミュニケーションや仕事のやり方に大きな影響を与えた人物として、彼とマイクロソフトのビル・ゲイツ氏を超える誰かの名前を上げるのは困難だろう」

"Admire him or hate him, Jobs' vision and business acumen revolutionized the world," "Between he and Microsoft founder Bill Gates, you would be hard pressed to find someone with greater influence over how we communicate, interact and do business over the last 30 years."

タイトルは"Steve Jobs: Co-Founder of Apple"(スティーブ・ジョブズ: アップル共同創業者)と、ストレートです。ページ数が32ページで3.99ドルというのは、日本では考えられない薄さだと思いますが、アメコミってだいたいそんな薄さですよね。

この会社、Facebook創業者のマーク・ザッカーバーグ氏の伝記コミックも9月に発売を予定しています。

Markzuckerbergcomiccover

PC Worldで、まだセリフの入ってない製作中のコミックの一ページが公開されていました。

Stevejobscomicsample

レディ・ガガとかアンジェリーナ・ジョリーの伝記マンガも出しているようで、大人はマンガを読まないとされる国で有名人伝記コミックという分野を開拓してるんですね。

スティーブ・ジョブズ氏のごくごく初期の活躍に絞ると、日本製の伝記マンガが実はあるんですよね。1984年(!)にコロコロコミックに掲載されたものを、作者のすがやみつるさんがブログで公開されています。こちらは24ページ。

Appleiistory


2010年12月27日 (月)

シェア <共有>からビジネスを生みだす新戦略

いただいたもの

個人と個人をつなぐことで新しい価値を創造する、いわゆるマッチングサービスを集めて解説した本です。

本書にもあるように、物々交換や作業を手伝う代わりに他のことを手伝ってもらう労働力の交換は、貨幣が広まる前には世界中で行われていたことでした。しかし、物やサービスの価値を貨幣というバーチャルなポイントで仲介できるようになってから、多くの人は企業からポイントを入手してそのポイントを別の企業に支払うことで必要な物やサービスを調達するようになってしまいました。

本書の前半で語られる、GMやクレジットカードのビジネスが狙ったところやどうやってそれを当たり前のものとして広めてきたかというところは、後半でのシェア=共有が相対する旧弊として説明されているのですが、それ自身が興味深い話でもありました。次々と新しいモデルを手に入れたくなるという購買意欲や、お金を借りてでも物やサービスを買いたいという気持ちは、最初から自然に存在していたわけではなくてそういう風にしたいと人々に思わせた存在がいるということですね。

ここでアメリカでの事例を中心に多数紹介されているのは、インターネット・ウェブの登場で実現できるようになった、ニッチな需要同士を引き合わせるさまざまなサービスです。貨幣を介在させることなく、サービスを提供できる人とサービスを受けたい人を直接引き合わせるウェブサービスをいろいろと紹介しています。

「目的が達成されればそれでいいじゃないか」というアメリカ人らしい合理主義がそれらのサービスが産まれた背景にあるのではないかと思います。実際にそれぞれのサービスが十分な利用者を集めているのかとか、ビジネスモデルを成立させているのかとかについては疑問に思うものもあるのですが、遠くのまったく関係の無い人を同じ興味でもって結びつけることができるネットの力を使って新しいサービスを作りたいという人にはヒントとなるところが多いのではないかと思いました。

この本自体にもシェアすることを薦める仕組みが組み込まれているので、職場でシェアしてみようと思います。


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2010年12月 6日 (月)

ネットで成功しているのは〈やめない人たち〉である

いただいたもの

読みました。日本のネットで日々「情報発信しているブロガー」110人から集めたブログを書く事やウェブサービスに関するアンケートをベースに書かれた本です。

ブログやツイッターなどのネットの活動を何年も続け、固定読者がつくようになったり、書いたことが他の人に影響を及ぼすようになったり、新しい仕事の依頼が来るようになったり、いろいろな変化を受けているであろうブロガーが選ばれ、全員に同じ質問がぶつけられています。

僕にもありがたいことにアンケート依頼が届いたため、回答しています。

# 「ネットで有名」かはともかく、ブロガーであることが職業になっているので、珍しい事例ではあるのかなと

しかし、アンケートを貰って答えたのはつい先日だったし、その時は何にするアンケートなのかとかちゃんと理解してなかったのですが、こんなスピードで本にまとまってしまうんですね。

前半に50ページぐらい、110名のアンケートの回答がそのまま掲載されているのですが、ネットで面白いことをしている人たちの考え方がわかってきて興味深いです。

最後の方は、これまで著者がブログでも過去の本でも言ってきた話につながっていきます。継続することと、継続した結果として蓄積されていく「ログ」の重要性。ツイッターとかEvernoteとか、その時々の新しいツールを追っているようでいて、実はいしたにさんの伝えんとしているところは常にここに落ちてくるのですよね(ほめてます)。ログを取ることで長期的な自分の生活(もちろんその中には仕事とかも含む)をより豊かにできるし、ツイッターとかEvernoteとかはそのための道具である、ということなのかなと読んでいます。


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2010年10月 5日 (火)

COURRiER Japon (クーリエ ジャポン) 2010年 10月号

いただいたもの

雑誌クーリエジャポン、たまに読むのですが、今回10月号をいただく機会がありました。

この雑誌は、世界のいろいろな雑誌等から面白い記事を集めてきて日本語で読ませてくれます。また、外国のメディアに載った日本に関するニュースも多く掲載していて、外国の視点から見た日本の現状や、普段特に気付かなかった日本がその国と違っている部分、というのを知ることができます。

ウェブとブログのおかげで、英語でネットサーフィンすることで簡単に知ることができるニュースは増えていて、クーリエジャポンの中でもそういう「既に知っている」ニュースもまったくないわけではないのですが、クーリエジャポンの面白いところは、英語の大手ブログでも相対的に出てくることの少ない地域、アフリカ・インドや英語以外のヨーロッパのニュースの比率が高いところかなと僕は思っています。

日本で出ている日本のニュースを載せた普通の週刊誌等とは違う種類のニュースが読めることから、視野が広がる感じがしていいですね。僕は細切れの時間ができたときに1,2記事ずつ読んで、一週間ぐらいで一通り目を通す、というような読み方をすることが多いです。

ちなみに、僕が今号で一番おもしろいと思ったのは、航空会社のマイレージシステムの穴を突いて大量のマイルを獲得した人の話ですね。


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2010年7月13日 (火)

IT業界を楽しく生き抜くための「つまみぐい勉強法」

いただいたもの

興味のあることや仕事でしなければいけなくなったことについて、少しずついろいろと「試してみる」という勉強法を薦める、ITエンジニア向けの自己学習の指南本です。

「つまみぐい」という言葉には手順立っていないというような悪いイメージもついてくるとは思いますが、真剣に順序立てて学習しようとした結果嫌になって途中でやめてしまうぐらいなら、どんな順番でも好きなところだけでも、できる範囲で少しずつやればいいんだ、という著者の考え方には共感できます。

かくいう僕自身も、英語ができるエンジニアということになっていますが、まともに英語の技術書を通しで読んだことなど記憶にありません。クラス名や変数名をつける時にオンラインの辞書を引いて、そのまま辞書の方が気になって数十分辞書をおっかけたりしているうちに、仕事で使う英語が少しずつ、それこそ何年もかけて身に付いたのだと思っています。そうやってそれている間は本来の仕事=プログラミングは当然止まっているのですけど、そういうちょっとした脇道もその人の総合的な仕事力につながっていると僕は思います。(思いたい)

他にも、ソーシャルブックマークの活用や、ブログ等へのアウトプットをすることで学んだ結果をまとめ、同時に他人の役にも立ちフィードバックを得てさらに成長するという手法、勉強会と独学の時間を適切に振り分けることで新しい知識を知り、それを吸収するサイクルを作る、など、これから社会人になる学生や、社会人になったけれど勉強法について迷っている人にとって役に立つアドバイスが含まれています。

それと、最終章「家族を持っている人の勉強の仕方」は、対象となる技術者や将来対象となるかもしれない技術者にとって考えないといけない重要なポイントですね。革命的な解決策が載っているというわけではありませんし、それは無理もないのですけれど、個人の自由な時間が減ってしまう状況にどうやって対処するのか、といったことへのアドバイスが載っています。個人的にもここは悩んでいる最中なので… 家族連れでも勉強会とか開発合宿ができる仲間がいるといいんですかね。


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2010年6月29日 (火)

ウェブ大変化 パワーシフトの始まり~クラウドだけでは語れない来たるべき未来

いただいたもの

楽天技術研究所所長の森正弥さんによる、現在と少し先のネット世界を俯瞰して解説した本です。

第一章は、最新の技術を使った多数の新しいインタフェースやユーティリティの紹介。タンジブル/ウェアラブル・コンピューターやオーギュメンテッド・リアリティなどの面白い事例が多数紹介されています。

第二章では、クラウドという言葉の登場した歴史から、単なるCPUの時間貸しにはとどまらないソフトウェアやプラットフォームの外部化。そして大規模データの登場とそれを処理するための分散処理や、エラー忘却型コンピューティングなどが言及。第三章では集合知やツイッターをはじめとしたリアルタイムウェブなど。

5年前10年前のネットやウェブの解説書には、ここで書かれていることの多くはまだ登場していなかったでしょう。つくづく、コンピューターやインターネットの産業というものが、先が読めている一直線の道を進んでいるのではなく、予想できなかった人気サービスや要素技術の登場でもってダイナミックにその進化の方向を変えて動いていると、読んでいて感じました。

この本のメインターゲットはネットの最新の状態を知りたいと思う普通の人だと思いますが、ともすれば難しくなってしまいそうなトピックについても平易に説明されています。著者があとがきで言及している「ウェブ進化論」を楽しんだ人であれば、同じようにわくわくできるのではないでしょうか。

個人的に面白かったのは、1910年代には発電所を企業が自前で持つのが標準だったが、維持や効率から発電を行う専門の会社から電気を買うのが数十年のうちに普通になった、という話とクラウドコンピューティングへの移行の類似を指摘しているところです。レッドタクトンとかイギリス政府のプロジェクト"Show Us a Better Way"などの把握していなかった技術やプロジェクトの情報も参考になりました。


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2010年4月30日 (金)

ソーシャルブレインズ入門――<社会脳>って何だろう

いただいたもの

人間の脳の研究は、人間に比較的近い猿等を使うにせよ、害のない実験を人間に対して行うにせよ、一つの脳だけを見て入出力を観察するだけでなく、複数の脳とその間の関係性を調べていかなければいけないのでは、またそれを調べないと社会のためとなる研究とはなりにくいのでは、というのがこの本の主張するところでしょうか。

ソーシャルブレインズ、社会脳、という言葉で、著者は複数の人間の関係とその関係の中での脳の働きを記録し、研究する最新の手法について紹介しています。

ラバーバンド実験(マネキンの腕であっても、自分の意識からつながっているように配置して、本物とマネキンの両方に同時に触れるなどして視覚と刺激を合わせると、マネキンの手に対する攻撃を自分が受けたように感じてしまう)など、脳に関する面白い実験なども多数紹介されています。

面白かったのは、人間の脳がチンパンジーの脳に比べて、より少ないエネルギーで効率よくまわさないといけない物理的制約を持っているという話(p.129)で、同じことは前にやったように繰り返すという保守的な傾向が出てしまうのは、このような制約の中で脳内の行動規範の作り変えにかかるコストを減らそうとしてのことでは、という話。社会や政治に脳の動きが影響するのは当たり前といえば当たり前ですが、変化を好まないという性質がそういう根源的な部分から出ている可能性があるという話は興味深いものでした。

また、スタンフォード監獄実験等を引き、人間の倫理観が絶対ではなく、社会に影響されているものにすぎないのでは、という話は、人間があるから倫理ができたと考えている僕にとっては納得のいくところです。

最後の方、乳幼児と親や社会との関係性の話も、子育てを始めたばかりの自分としては気になるところで、考えさせられました。


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2010年4月28日 (水)

最近いただいた本

育児休業中から今までいただいた本です

感想はなるべく早く… はい

# 漫画だったらすごい速度で読めるんですが

2010年4月16日 (金)

希望の仕事術

台湾滞在中に、台北のアパートまで送られてきた頂き物です。ありがとうございます。

「ロッキング・オン」創刊メンバーの一人、今年60歳となる著者 (twitter @metakit)が、後進に対して仕事に対する心構えを説いた本。一文でズバッと切りこんだ著者の考えがまず出て、ページをめくるとその文が意味するところを補足した解説が出てきます。

いくつか心に響いたものを、

「やってみなけりゃわからん」ことだけが楽しい

楽しい仕事って何か、考えさせられますね。

30歳の君に贈る。いつまでも修行ばっかりしてるんじゃないぞ

これは刺さるかも。実践のない修行じゃ前には進まない。

解説まで引用してしまうと書籍の意味がなくなってしまうのでやめておきます。

簡潔にまとめられた文の集まりは、詩を読んでいるようでもあります。この本のいいなと感じたところは、よくありがちな「成功者が成功の理由を講釈してくれる」ようなものではないところですね。著者の方には長く働いている分の経験と智恵があり、それを読者に分けてくれているのですが、そこに押しつけの気持は感じられませんし、仕事に悩む者に対する応援の気持が感じられました。


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2009年12月16日 (水)

クラウド Amazon EC2/S3のすべて 実践者から学ぶ設計/構築/運用ノウハウ

いただいたもの

タイトルにあるように、今年のIT流行語「クラウド」の中でも代表的なサービスであるアマゾンのEC2とS3について解説した本です。

アマゾンはEC2やS3だけじゃなくて、大規模なWebサービスを作ろうとするとほしくなるさまざまなサービスを次々と出しています。本書では2章でそういったAPIやサービスについても説明しています。また、6章では実際にローカルのPCからEC2やS3を使うまでの手順を、わかりやすく使うためのツールの入手や導入方法まで含めて解説しています。

Amazon.comにもこれらのウェブサービスのドキュメントはあるのですが、なんといっても全部英語ですし、彼らのAPIに関する技術者向けのオンラインドキュメントは構成とかパーマリンクとかがどうにもわかりにくいと思っています。

Amazonのこれら一連のサービスは、日本のエンジニアに興味を持って試している人や実際に利用している人がかなり多いし、完全に置換可能な日本のサービスがまだ出始めという状況で他の選択肢も少ない状況ですが、肝心のアマゾンが日本語開発者向けにそれほど力を入れてくれていないので、この本はとてもいいんじゃないかと思います。

著者は実際に顧客向けのサービスで多数台を借りておられることから、システム設計時のネットワークやバックアップ戦略の立て方、開発時の各種テストのやり方など、アマゾンのサービス上で開発運用してみないとわからない落とし穴とそれらにどう対処したかも書かれています。2,6,7章あたりのことは、まとまってて参照しやすく便利ですが公式のマニュアルやブログ等を探せばなんとかなりますけど、4,5章はネットで調べてもそれほど情報量もないのではと思いました。


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2009年12月15日 (火)

PHP逆引きレシピ すぐに美味しいサンプル&テクニック261

いただいたもの

最初に正直に言いますが、750ページあるこのティップス本、隅々まで読んではいません。この本はタイトルにレシピとあるように、PHPの利用時に何か新しいことをする必要がでた際に、そのやり方を調べるために使う本です。僕の場合PHPはそれなりに親しんでいるので、まだそれほど使う機会が無いのですが、いくつか見た感じでは、かなり丁寧に書かれています。

PHPだけの問題か、PHPでより目立っているだけかわかりませんが、PHPの本というのはたくさんある割に、PHPのインストールからとても簡単な初歩のスクリプトを動かすまでのものが多く、またそれらの書籍の中には実際に使うとエラー処理やセキュリティ対策などの点で問題になりそうなものを「サンプルだから」として載せてるものも少なくありません。そんな中で、入力からやってきたテキストの出力時エスケープなどには気を配られて書かれています。

このあたりの「PHPで○○をするには」というのは、実はウェブで検索すればだいたい答えは出てきます。しかし、検索で調べると、いろいろな異なるやり方や、正しさのレベルが違う多数の答えが出てくるのですね。その中からモダンな書き方をしてない古い書き方のものや、いいかげんな事を検証せず書く人のブログは避けるとかしないと簡単に落とし穴にはまってしまいます。初心者の人にとって一番難しいのはそこでしょう。ウェブでは、答えが見つからないのではなく、答えが見つかりすぎてしまうのです。そういう点では、大きな間違いは入らないように注意されている本書のような本でPHPを覚えていくのは、初心者にはありかなと思います。

それから、phpMyAdmin, WordPress, MyNETSというアプリケーションについては、特に前の二つはPHPの代表的な実用アプリケーションだと思いますが、日本で良く使われるホスティングサービス数社の設定画面等まで出して、実際にインターネット上に展開して動かすまでの解説もされています。

SQLのより効率の良い書き方についての疑念と、一点SQLのエスケープの範囲ミスがあることがこちらで指摘されてます。これだけ丁寧に作られた本なので、増刷で直ると思いますが、初版の方は正誤表も見ておくとよいでしょう。


[書評に関する注意書き]

  • 貰って書いた本についてはその旨記述します
  • このブログはサイボウズ・ラボの社員ブログなので、秋元個人に献本いただいても、何でも自由に書けるわけではありません。
  • もちろん、書評以外の他のブログエントリもそうですが、社員ブログではあってもサイボウズ・ラボ全社やサイボウズ・グループの意見を代弁してるわけではありません。
  • 献本いただいても必ず読めるわけでも、ご紹介できるわけでもありません。読書の速度は遅いので、発売前や発売直後に送っていただいても、ご紹介が半年後になるようなことも多々あります。

2009年11月30日 (月)

「結果を出す人」はノートに何を書いているのか

著者とお会いした記念に自腹で買ったもの。ということでいつものいただきものとはちょっと違いますが

紙のノートを使う習慣はもう過去10年以上無いし、この先紙に回帰することもないだろうと思うので、正直言うと本のタイトルにはそれほどひかれませんでした。そのため、役割の異なるノート3冊をうまく使い分けることで仕事の効率を上げよう、という主題も、「デジタルだったらどうするか? 何に対応するか」というのを考えずにはいられなかったため、僕は直接対象とする読者ではなかったかと思います。

しかし、自分のやってる、パソコンや携帯電話、PDAだけで紙を使わない、完全デジタルな仕事のやり方が、紙のノートを使ったやり方より優れてると思っているわけでも、実はないのですね。単にデジタルが好きでしょうがないから、実際には不便だったり劣ったりする個所もあるのだろうけど目をつぶり、検索性とかデジタルの強いところを偏愛している自覚はあります。

僕らの世代、というか、上下20年ずつぐらいの大きな幅でそうなのかもしれませんが、紙で仕事をする人が少しずつ紙を使わなくなっていくという変化の中にあるのだと思います。その中で本書は、紙のノートで仕事を回していくための知見をひたすら追求し自ら実験してきた著者による、仕事のやり方本でした。(iPhoneやスキャナ活用など、本書でもデジタルに絡んでいるところはあります)

繰り返し行うことをミスなく実施するにはどうするか、アイデアを得るためのメモ取りはどんなものか、仕事の優先順位をうまくつけるには、嫌なことを先延ばししないようには、といった仕事の上での課題に対して、ノートとその他の文房具を活用して立ち向かうためのノウハウ本、という印象を持ちました。

僕自身はノートに戻らない誓いを立てているにせよ、一人の(おそらくたいへんできる)ビジネスマンが、仕事のやり方を考えて工夫してきたその結果を見るのは興味深い読書体験でした。今現在ノート派の人や、これからもノートだという方は、読んでみると面白いのではないでしょうか。


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ねじれ脳の行動経済学

いただいたもの

以前にも、わかっちゃいるけど、痩せられない―メタボの行動経済学という新書をいただき、楽しく読ませていただきました。

今回のこの本も、同じ著者古川雅一さんによる、タイトルに行動経済学と入った本です。

前回はダイエットというテーマを中心に、しかしメインはダイエットではなく行動経済学の紹介だった、と僕には思われた本でしたが、前回の本の評判が良かったのでしょうか、今回は最初から行動経済学をメインに立てた本。

さまざまな周辺情報に、いかにして人は影響され、理にかなってない選択肢を取ってしまうのか、ということが、いろいろな例をもって紹介されます。この本にある全部の知識が簡単に身に付くとは思えないのですが、それでも、知っていることで正しい損得勘定をできたり、あるいは逆に、人に物を売ったり部下に仕事をさせたりするときに、実際の合理と別にこちらの都合のよいように動かすことができたり、ということもできるのかもしれません。


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Twitter革命

いただいたもの

神田 敏晶 ¥ 767

ビデオジャーナリストとしてKNN.comを運営されている神田さん(@knnkanda)が書かれたツイッターのガイド本。

神田さんのツイッター愛があふれる熱い本でした。ツイッターを使って楽しんでいるポジティブな成功事例が多く紹介されていて、この本を読んだ人はとにかく一度はツイッターに登録して試してみるんだろうなと思います。

見開きごとに5行程度のミニコラムがあり、ここでツイッター関連サービスやツイッターに関連した事件などが大量に紹介されています。俳優のアシュトン・カッチャーがどうしてツイッターでそんなに人気を博したのか、とか、日本語英語どちらも追っている神田さんならではのネタの選択でした。

本をいただく前に、誤植がありましたという連絡を先にメールでいただいたのですが、この本では僕が個人で作って運用している、ツイッターで読書記録を取る読んだ4!というツイッター利用サービスを紹介いただいてます。

本書のp.58なのですが、ここで「読んだ本をつぶやく相手のアカウント @yonda4 が、誤って @4da4< になっていました」という連絡をいただいたのですが、急遽 @4da4/a> アカウントを取ってそこに正しいアカウントへの案内を掲載するという対処を行いました。これで大丈夫!

2バイト文字とかOAuthの説明とか、技術的に少し変なところはあるけれど、このへんは技術者のチェックを経ずに出版を急いだのかもしれませんね。@yonda4と同様次版で直るといいなと思います。


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2009年11月20日 (金)

書評: フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略

フリーでいただいたもの

フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略

「ロングテール」のクリス・アンダーソンさんがまたやってくれました、の本書 フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略

無料(フリー)を活用したビジネスが昔からあったこと、データのデジタル化に伴って複製のコストが0に近づいたことで、フリーを使った新しいビジネスモデルが多数登場したこと、を、豊富な事例と歴史的な資料をふんだんに使って読み解いてくれる本です。

デジタルと著作権のまわりで起こるトラブルと、それに対して中国やブラジルで起こっている新しい時代のビジネス関して、ラジオの広告、そしてそれのバリエーションであるテレビの広告、という僕達が当たり前のものとして受け取っているフリーを使ったモデルも、ラジオの黎明期には確立したアイデアではなく、直接課金など他の方法も模索されていた、など、過去の面白い話もたくさん載っていたのが個人的にはツボでした。

「ロングテール」でも出版後の調べてロングテールではなかった事例があったように、またどんな業界のどんな商売にも適応できるようなものではなかったのと同様に、フリーや本書で紹介されている様々なビジネスのアイデアも、なんにでも使えるものではないでしょう。しかし、こういったやり方でも継続するサービスが成り立つことがあるのだ、という情報は、知っておいて損がないのでは、と考えさせられました。


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2009年10月 8日 (木)

ツイッター 140文字が世界を変える

いただいたもの

twitterが最初に日本のユーザーにも知られるようになった2007年春頃からツイッターを使い、ツイッターの利用法やいろいろなツイッターの関連サービスの紹介などをブログで紹介してきた二人のブロガーによる、「ツイッターここまでのまとめ」「ツイッターの今」「企業とツイッター」などについて書かれたツイッター本です。

ここ数ヶ月あたりはツイッター本の出版ラッシュらしく、この本もその中の一冊です。新聞やテレビなどでも「ツイッターとは?」といった紹介がみられるようになった今年、多くの人がツイッターについて知りたい、教えてほしい、と思っているのではないでしょうか。

前半は、ツイッターの歴史や、なぜ今このように盛り上がっているのか、そしてツイッターの基本的な使い方や活用法、周辺サービスなど、ツイッターを始めたばかりの人やこれから始める人にとっての良いガイドブックとなっています。

著者は「クチコミの技術」のお二人でもあるので、第四章(全体の1/7ぐらい)では、企業の成功事例などもインタビューを交えて紹介されています。ブログと同じで、全部の企業がツイッターをやるべき、などとは僕は思いませんが、ツイッターの特性をうまく生かして、新しいチャンネルで顧客とコミュニケーションしたい、という企業であれば、始める際の参考になるのではないでしょうか。

第五章「ツイッターの今後」も、ツイッターが持つポテンシャル、日本・日本語とツイッター、ツイッターの普及が社会に与えていくであろう影響の予測、など、興味深い論考が見られます。

現状の問題点の指摘もありつつ、ツイッターとツイッターユーザーが作る世界の未来に期待ができるポジティブで楽しい本でした。


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2009年9月25日 (金)

コストをおさえてリピート客を増やす! 効率3倍アップのニッチメディア広告術

いただいたもの

コストをおさえてリピート客を増やす! 効率3倍アップのニッチメディア広告術

ニッチメディアというのは、テレビCMのような誰でも見る(時間帯や番組によって調整はあると思いますが)マスメディアではなく、特定の属性を持った人だけが見る、ターゲットとしてはっきりとした広告媒体のことを言うそうです。

この本は、ニッチメディアが効いた事例や、様々なニッチメディアを紹介するカタログ的な本です。

エスカレーターの手すりとか、松屋の食券の裏とか、もちろんメルマガとかウェブサイトとかについても、知ってる人は知ってるが、知らない人はまったく知らないような多くのニッチメディアが、紹介されたり、巻末のリストにまとめられていたりします。欲を言うとこういうリストこそオンラインで検索や絞り込みができるのが望ましいとは思うのですが、本で売るという形だとしかたがないですね。

主婦、老人、学生、など、特定のターゲットに「だけ」知られ、読まれているメディアやウェブサイトなどの情報は、知らないものが多く「へえ、こんなサイトがあるんだ」と驚きます。もしも、そのターゲット層が絞られていればじゃんじゃん売れる、という商品を持っているのであれば、そのニッチメディアを知っているということは大きなアドバンテージになるでしょうね。


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2009年8月26日 (水)

キャパシティプランニング

いただいたもの

Flickrの中の人がFlickrのキャパシティプランニングについて解説した本です。キャパシティプランニング(容量計画)は耳慣れない単語ですが、ここで言っているキャパシティはウェブサービスの運営に必要なリソース(サーバ台数、メモリ、ディスク、回線容量やサーバ設置の部屋・ビルまで)で、それらのリソースがこの先どう不足し、いつどれだけ手当てをする必要が出てくるかということを見積もり準備するのがプランニングウとなります。

課金の方法が十分に発達していないこともあり、今はGoogleやYahooをはじめとしたウェブサービスのほとんどが無料で使えます。しかし、ウェブサービスがタダで運営できるはずもなく、運営側にとってはできるだけ「ギリギリ足りる」サーバ台数やその他の設備で運営できないと、ただでさえ広告ぐらいしか方法がない収入では費用をまかなえず、サービスを続けられなくなってしまいます。実際に今年はいろいろなサービスの終了を目にしているように思います。

ギリギリ足りる、でも不足してサービスを止めたりはしない、量のリソースを把握し、利用者の伸びに応じて今後の不足分を、これまた最小限に見極めて手配するのは、ウェブサービスのビジネス運営の観点から非常に重要だというわけです。

しかし、この手の書籍は「プログラミング言語を学ぼう」とか「ウェブアプリを作ろう」という技術書に比べると、数が少ないですね。実際に大規模なサービスで毎日のように新しいサーバを調達しているような現場で働いている人でないと書けませんし、それを書いてくれる人も少数なのだと思います。

この本では、ツールを使ってどのように現状を追跡する(モニタリング)か、収集したデータを分析し、この先キャパシティが足りなくなるポイントを予測するにはどうするか、複数の要因が組み合わさってリソース消費が変動するときに、条件を変えて実験することでどのリソースが使われ、どのリソースが最初に足りなくなりそうかを推測する、といった手順について丁寧に書かれています。なにより、使われているグラフや数字が、実際のFlickrの運営でのデータに基づいているのですから、説得力は高いですね。

付録Aでは、クラウドの利用について、実際にクラウドサービスを活用しているサービスの紹介を含めての解説がされています。Amazon S3は、単なるストレージとしてみるだけであれば、自前で構築した場合の3,4倍はかかるということ。クラウドサービスで得られるものと得られないものを把握し、利点が自社のサービスや成長の度合いに合致した場合には採用する、という、当たり前ですが大事なことが書かれていました。

著者John Allspawさんのブログ, twitter, プレゼンテーションスライドはこちら


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2009年7月17日 (金)

書評: リファクタリング・ウェットウェア ―達人プログラマーの思考法と学習法

いただいたもの

副題「達人プログラマーの思考法と学習法」ということで、同じ著者による「達人プログラマー」

みたいな本かと思っていましたが、近い点もあるものの「プログラマー」のところよりむしろ「思考法と学習法」に充填が置かれた本でした。なので、プログラマーに限らず、自分の頭の使い方やその改善方法に興味がある人に向いた本ではないかと思います。

僕は「右脳・左脳」とか「人間の脳の潜在能力」とか「脳をトレーニング」とかそういう話にはあまり興味がありません。人間に限らず、生物の脳が簡単なスイッチみたいに動作の仕組みがわかったり操作できたりするという発想に直感的に同意できないからです。何十年も先には解明されるのかもしれませんけども。

なので、目次を開いて「脳」の字をいっぱい見たときは嫌な感じがしたのですが(書店で手に取ってたらたぶん買ってないでしょうね)、この本では、「右脳・左脳」みたいな占いみたいな話を全肯定はしておらず、現段階の研究成果でわかっていることを引きながら、注意深く脳の活用の仕方について書いてるし、あまりアクロバティックな「○○すると△△が解決する」みたいなことは見当たりません。

たとえば、自分の体で確かめられて実感できた面白い話が載っていました。

椅子に腰掛けて、右足を床から離し、時計回りに回します。そうしながら今度は、右手で「6」という数字を中に書きます。

リファクタリング・ウェットウェア ―達人プログラマーの思考法と学習法 p.46より

これ、自分でやってみてびっくりしたので、右足に何が起こるか注意しながらぜひやってみてください。こういった、既に明らかになっていることや最近の研究成果を参照した上で、考え違いや間違いを引き起こす頭の中のバグを避ける方法や、割り込みを避けて集中力を高める方法などが紹介されています。

付録の参考文献の膨大な量からしても、著者は相当な調べ物をした上で、脳の働きについてこれまでのところ「こうではないか」と思われていることを中心に、それをどう実際の仕事や生活に生かせるか、ということを説明しようとしています。


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週三日勤務でこのブログを書き、残りの日は個人で活動しています