書評

2009年12月16日 (水)

クラウド Amazon EC2/S3のすべて 実践者から学ぶ設計/構築/運用ノウハウ

いただいたもの

タイトルにあるように、今年のIT流行語「クラウド」の中でも代表的なサービスであるアマゾンのEC2とS3について解説した本です。

アマゾンはEC2やS3だけじゃなくて、大規模なWebサービスを作ろうとするとほしくなるさまざまなサービスを次々と出しています。本書では2章でそういったAPIやサービスについても説明しています。また、6章では実際にローカルのPCからEC2やS3を使うまでの手順を、わかりやすく使うためのツールの入手や導入方法まで含めて解説しています。

Amazon.comにもこれらのウェブサービスのドキュメントはあるのですが、なんといっても全部英語ですし、彼らのAPIに関する技術者向けのオンラインドキュメントは構成とかパーマリンクとかがどうにもわかりにくいと思っています。

Amazonのこれら一連のサービスは、日本のエンジニアに興味を持って試している人や実際に利用している人がかなり多いし、完全に置換可能な日本のサービスがまだ出始めという状況で他の選択肢も少ない状況ですが、肝心のアマゾンが日本語開発者向けにそれほど力を入れてくれていないので、この本はとてもいいんじゃないかと思います。

著者は実際に顧客向けのサービスで多数台を借りておられることから、システム設計時のネットワークやバックアップ戦略の立て方、開発時の各種テストのやり方など、アマゾンのサービス上で開発運用してみないとわからない落とし穴とそれらにどう対処したかも書かれています。2,6,7章あたりのことは、まとまってて参照しやすく便利ですが公式のマニュアルやブログ等を探せばなんとかなりますけど、4,5章はネットで調べてもそれほど情報量もないのではと思いました。


[書評に関する注意書き]

  • 貰って書いた本についてはその旨記述します
  • このブログはサイボウズ・ラボの社員ブログなので、秋元個人に献本いただいても、何でも自由に書けるわけではありません。
  • もちろん、書評以外の他のブログエントリもそうですが、社員ブログではあってもサイボウズ・ラボ全社やサイボウズ・グループの意見を代弁してるわけではありません。
  • 献本いただいても必ず読めるわけでも、ご紹介できるわけでもありません。読書の速度は遅いので、発売前や発売直後に送っていただいても、ご紹介が半年後になるようなことも多々あります。

2009年12月15日 (火)

PHP逆引きレシピ すぐに美味しいサンプル&テクニック261

いただいたもの

最初に正直に言いますが、750ページあるこのティップス本、隅々まで読んではいません。この本はタイトルにレシピとあるように、PHPの利用時に何か新しいことをする必要がでた際に、そのやり方を調べるために使う本です。僕の場合PHPはそれなりに親しんでいるので、まだそれほど使う機会が無いのですが、いくつか見た感じでは、かなり丁寧に書かれています。

PHPだけの問題か、PHPでより目立っているだけかわかりませんが、PHPの本というのはたくさんある割に、PHPのインストールからとても簡単な初歩のスクリプトを動かすまでのものが多く、またそれらの書籍の中には実際に使うとエラー処理やセキュリティ対策などの点で問題になりそうなものを「サンプルだから」として載せてるものも少なくありません。そんな中で、入力からやってきたテキストの出力時エスケープなどには気を配られて書かれています。

このあたりの「PHPで○○をするには」というのは、実はウェブで検索すればだいたい答えは出てきます。しかし、検索で調べると、いろいろな異なるやり方や、正しさのレベルが違う多数の答えが出てくるのですね。その中からモダンな書き方をしてない古い書き方のものや、いいかげんな事を検証せず書く人のブログは避けるとかしないと簡単に落とし穴にはまってしまいます。初心者の人にとって一番難しいのはそこでしょう。ウェブでは、答えが見つからないのではなく、答えが見つかりすぎてしまうのです。そういう点では、大きな間違いは入らないように注意されている本書のような本でPHPを覚えていくのは、初心者にはありかなと思います。

それから、phpMyAdmin, WordPress, MyNETSというアプリケーションについては、特に前の二つはPHPの代表的な実用アプリケーションだと思いますが、日本で良く使われるホスティングサービス数社の設定画面等まで出して、実際にインターネット上に展開して動かすまでの解説もされています。

SQLのより効率の良い書き方についての疑念と、一点SQLのエスケープの範囲ミスがあることがこちらで指摘されてます。これだけ丁寧に作られた本なので、増刷で直ると思いますが、初版の方は正誤表も見ておくとよいでしょう。


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2009年11月30日 (月)

「結果を出す人」はノートに何を書いているのか

著者とお会いした記念に自腹で買ったもの。ということでいつものいただきものとはちょっと違いますが

紙のノートを使う習慣はもう過去10年以上無いし、この先紙に回帰することもないだろうと思うので、正直言うと本のタイトルにはそれほどひかれませんでした。そのため、役割の異なるノート3冊をうまく使い分けることで仕事の効率を上げよう、という主題も、「デジタルだったらどうするか? 何に対応するか」というのを考えずにはいられなかったため、僕は直接対象とする読者ではなかったかと思います。

しかし、自分のやってる、パソコンや携帯電話、PDAだけで紙を使わない、完全デジタルな仕事のやり方が、紙のノートを使ったやり方より優れてると思っているわけでも、実はないのですね。単にデジタルが好きでしょうがないから、実際には不便だったり劣ったりする個所もあるのだろうけど目をつぶり、検索性とかデジタルの強いところを偏愛している自覚はあります。

僕らの世代、というか、上下20年ずつぐらいの大きな幅でそうなのかもしれませんが、紙で仕事をする人が少しずつ紙を使わなくなっていくという変化の中にあるのだと思います。その中で本書は、紙のノートで仕事を回していくための知見をひたすら追求し自ら実験してきた著者による、仕事のやり方本でした。(iPhoneやスキャナ活用など、本書でもデジタルに絡んでいるところはあります)

繰り返し行うことをミスなく実施するにはどうするか、アイデアを得るためのメモ取りはどんなものか、仕事の優先順位をうまくつけるには、嫌なことを先延ばししないようには、といった仕事の上での課題に対して、ノートとその他の文房具を活用して立ち向かうためのノウハウ本、という印象を持ちました。

僕自身はノートに戻らない誓いを立てているにせよ、一人の(おそらくたいへんできる)ビジネスマンが、仕事のやり方を考えて工夫してきたその結果を見るのは興味深い読書体験でした。今現在ノート派の人や、これからもノートだという方は、読んでみると面白いのではないでしょうか。


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ねじれ脳の行動経済学

いただいたもの

以前にも、わかっちゃいるけど、痩せられない―メタボの行動経済学という新書をいただき、楽しく読ませていただきました。

今回のこの本も、同じ著者古川雅一さんによる、タイトルに行動経済学と入った本です。

前回はダイエットというテーマを中心に、しかしメインはダイエットではなく行動経済学の紹介だった、と僕には思われた本でしたが、前回の本の評判が良かったのでしょうか、今回は最初から行動経済学をメインに立てた本。

さまざまな周辺情報に、いかにして人は影響され、理にかなってない選択肢を取ってしまうのか、ということが、いろいろな例をもって紹介されます。この本にある全部の知識が簡単に身に付くとは思えないのですが、それでも、知っていることで正しい損得勘定をできたり、あるいは逆に、人に物を売ったり部下に仕事をさせたりするときに、実際の合理と別にこちらの都合のよいように動かすことができたり、ということもできるのかもしれません。


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Twitter革命

いただいたもの

神田 敏晶 ¥ 767

ビデオジャーナリストとしてKNN.comを運営されている神田さん(@knnkanda)が書かれたツイッターのガイド本。

神田さんのツイッター愛があふれる熱い本でした。ツイッターを使って楽しんでいるポジティブな成功事例が多く紹介されていて、この本を読んだ人はとにかく一度はツイッターに登録して試してみるんだろうなと思います。

見開きごとに5行程度のミニコラムがあり、ここでツイッター関連サービスやツイッターに関連した事件などが大量に紹介されています。俳優のアシュトン・カッチャーがどうしてツイッターでそんなに人気を博したのか、とか、日本語英語どちらも追っている神田さんならではのネタの選択でした。

本をいただく前に、誤植がありましたという連絡を先にメールでいただいたのですが、この本では僕が個人で作って運用している、ツイッターで読書記録を取る読んだ4!というツイッター利用サービスを紹介いただいてます。

本書のp.58なのですが、ここで「読んだ本をつぶやく相手のアカウント @yonda4 が、誤って @4da4< になっていました」という連絡をいただいたのですが、急遽 @4da4/a> アカウントを取ってそこに正しいアカウントへの案内を掲載するという対処を行いました。これで大丈夫!

2バイト文字とかOAuthの説明とか、技術的に少し変なところはあるけれど、このへんは技術者のチェックを経ずに出版を急いだのかもしれませんね。@yonda4と同様次版で直るといいなと思います。


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2009年11月20日 (金)

書評: フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略

フリーでいただいたもの

フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略

「ロングテール」のクリス・アンダーソンさんがまたやってくれました、の本書 フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略

無料(フリー)を活用したビジネスが昔からあったこと、データのデジタル化に伴って複製のコストが0に近づいたことで、フリーを使った新しいビジネスモデルが多数登場したこと、を、豊富な事例と歴史的な資料をふんだんに使って読み解いてくれる本です。

デジタルと著作権のまわりで起こるトラブルと、それに対して中国やブラジルで起こっている新しい時代のビジネス関して、ラジオの広告、そしてそれのバリエーションであるテレビの広告、という僕達が当たり前のものとして受け取っているフリーを使ったモデルも、ラジオの黎明期には確立したアイデアではなく、直接課金など他の方法も模索されていた、など、過去の面白い話もたくさん載っていたのが個人的にはツボでした。

「ロングテール」でも出版後の調べてロングテールではなかった事例があったように、またどんな業界のどんな商売にも適応できるようなものではなかったのと同様に、フリーや本書で紹介されている様々なビジネスのアイデアも、なんにでも使えるものではないでしょう。しかし、こういったやり方でも継続するサービスが成り立つことがあるのだ、という情報は、知っておいて損がないのでは、と考えさせられました。


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2009年10月 8日 (木)

ツイッター 140文字が世界を変える

いただいたもの

twitterが最初に日本のユーザーにも知られるようになった2007年春頃からツイッターを使い、ツイッターの利用法やいろいろなツイッターの関連サービスの紹介などをブログで紹介してきた二人のブロガーによる、「ツイッターここまでのまとめ」「ツイッターの今」「企業とツイッター」などについて書かれたツイッター本です。

ここ数ヶ月あたりはツイッター本の出版ラッシュらしく、この本もその中の一冊です。新聞やテレビなどでも「ツイッターとは?」といった紹介がみられるようになった今年、多くの人がツイッターについて知りたい、教えてほしい、と思っているのではないでしょうか。

前半は、ツイッターの歴史や、なぜ今このように盛り上がっているのか、そしてツイッターの基本的な使い方や活用法、周辺サービスなど、ツイッターを始めたばかりの人やこれから始める人にとっての良いガイドブックとなっています。

著者は「クチコミの技術」のお二人でもあるので、第四章(全体の1/7ぐらい)では、企業の成功事例などもインタビューを交えて紹介されています。ブログと同じで、全部の企業がツイッターをやるべき、などとは僕は思いませんが、ツイッターの特性をうまく生かして、新しいチャンネルで顧客とコミュニケーションしたい、という企業であれば、始める際の参考になるのではないでしょうか。

第五章「ツイッターの今後」も、ツイッターが持つポテンシャル、日本・日本語とツイッター、ツイッターの普及が社会に与えていくであろう影響の予測、など、興味深い論考が見られます。

現状の問題点の指摘もありつつ、ツイッターとツイッターユーザーが作る世界の未来に期待ができるポジティブで楽しい本でした。


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2009年9月25日 (金)

コストをおさえてリピート客を増やす! 効率3倍アップのニッチメディア広告術

いただいたもの

コストをおさえてリピート客を増やす! 効率3倍アップのニッチメディア広告術

ニッチメディアというのは、テレビCMのような誰でも見る(時間帯や番組によって調整はあると思いますが)マスメディアではなく、特定の属性を持った人だけが見る、ターゲットとしてはっきりとした広告媒体のことを言うそうです。

この本は、ニッチメディアが効いた事例や、様々なニッチメディアを紹介するカタログ的な本です。

エスカレーターの手すりとか、松屋の食券の裏とか、もちろんメルマガとかウェブサイトとかについても、知ってる人は知ってるが、知らない人はまったく知らないような多くのニッチメディアが、紹介されたり、巻末のリストにまとめられていたりします。欲を言うとこういうリストこそオンラインで検索や絞り込みができるのが望ましいとは思うのですが、本で売るという形だとしかたがないですね。

主婦、老人、学生、など、特定のターゲットに「だけ」知られ、読まれているメディアやウェブサイトなどの情報は、知らないものが多く「へえ、こんなサイトがあるんだ」と驚きます。もしも、そのターゲット層が絞られていればじゃんじゃん売れる、という商品を持っているのであれば、そのニッチメディアを知っているということは大きなアドバンテージになるでしょうね。


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2009年8月26日 (水)

キャパシティプランニング

いただいたもの

Flickrの中の人がFlickrのキャパシティプランニングについて解説した本です。キャパシティプランニング(容量計画)は耳慣れない単語ですが、ここで言っているキャパシティはウェブサービスの運営に必要なリソース(サーバ台数、メモリ、ディスク、回線容量やサーバ設置の部屋・ビルまで)で、それらのリソースがこの先どう不足し、いつどれだけ手当てをする必要が出てくるかということを見積もり準備するのがプランニングウとなります。

課金の方法が十分に発達していないこともあり、今はGoogleやYahooをはじめとしたウェブサービスのほとんどが無料で使えます。しかし、ウェブサービスがタダで運営できるはずもなく、運営側にとってはできるだけ「ギリギリ足りる」サーバ台数やその他の設備で運営できないと、ただでさえ広告ぐらいしか方法がない収入では費用をまかなえず、サービスを続けられなくなってしまいます。実際に今年はいろいろなサービスの終了を目にしているように思います。

ギリギリ足りる、でも不足してサービスを止めたりはしない、量のリソースを把握し、利用者の伸びに応じて今後の不足分を、これまた最小限に見極めて手配するのは、ウェブサービスのビジネス運営の観点から非常に重要だというわけです。

しかし、この手の書籍は「プログラミング言語を学ぼう」とか「ウェブアプリを作ろう」という技術書に比べると、数が少ないですね。実際に大規模なサービスで毎日のように新しいサーバを調達しているような現場で働いている人でないと書けませんし、それを書いてくれる人も少数なのだと思います。

この本では、ツールを使ってどのように現状を追跡する(モニタリング)か、収集したデータを分析し、この先キャパシティが足りなくなるポイントを予測するにはどうするか、複数の要因が組み合わさってリソース消費が変動するときに、条件を変えて実験することでどのリソースが使われ、どのリソースが最初に足りなくなりそうかを推測する、といった手順について丁寧に書かれています。なにより、使われているグラフや数字が、実際のFlickrの運営でのデータに基づいているのですから、説得力は高いですね。

付録Aでは、クラウドの利用について、実際にクラウドサービスを活用しているサービスの紹介を含めての解説がされています。Amazon S3は、単なるストレージとしてみるだけであれば、自前で構築した場合の3,4倍はかかるということ。クラウドサービスで得られるものと得られないものを把握し、利点が自社のサービスや成長の度合いに合致した場合には採用する、という、当たり前ですが大事なことが書かれていました。

著者John Allspawさんのブログ, twitter, プレゼンテーションスライドはこちら


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2009年7月17日 (金)

書評: リファクタリング・ウェットウェア ―達人プログラマーの思考法と学習法

いただいたもの

副題「達人プログラマーの思考法と学習法」ということで、同じ著者による「達人プログラマー」

みたいな本かと思っていましたが、近い点もあるものの「プログラマー」のところよりむしろ「思考法と学習法」に充填が置かれた本でした。なので、プログラマーに限らず、自分の頭の使い方やその改善方法に興味がある人に向いた本ではないかと思います。

僕は「右脳・左脳」とか「人間の脳の潜在能力」とか「脳をトレーニング」とかそういう話にはあまり興味がありません。人間に限らず、生物の脳が簡単なスイッチみたいに動作の仕組みがわかったり操作できたりするという発想に直感的に同意できないからです。何十年も先には解明されるのかもしれませんけども。

なので、目次を開いて「脳」の字をいっぱい見たときは嫌な感じがしたのですが(書店で手に取ってたらたぶん買ってないでしょうね)、この本では、「右脳・左脳」みたいな占いみたいな話を全肯定はしておらず、現段階の研究成果でわかっていることを引きながら、注意深く脳の活用の仕方について書いてるし、あまりアクロバティックな「○○すると△△が解決する」みたいなことは見当たりません。

たとえば、自分の体で確かめられて実感できた面白い話が載っていました。

椅子に腰掛けて、右足を床から離し、時計回りに回します。そうしながら今度は、右手で「6」という数字を中に書きます。

リファクタリング・ウェットウェア ―達人プログラマーの思考法と学習法 p.46より

これ、自分でやってみてびっくりしたので、右足に何が起こるか注意しながらぜひやってみてください。こういった、既に明らかになっていることや最近の研究成果を参照した上で、考え違いや間違いを引き起こす頭の中のバグを避ける方法や、割り込みを避けて集中力を高める方法などが紹介されています。

付録の参考文献の膨大な量からしても、著者は相当な調べ物をした上で、脳の働きについてこれまでのところ「こうではないか」と思われていることを中心に、それをどう実際の仕事や生活に生かせるか、ということを説明しようとしています。


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